#5 姿勢の崩れと運動連鎖(うんどうれんさ)の関係
上記の写真の様な姿勢で座って過ごす子は多いんじゃないでしょうか?
座った状態で横にずれ背中が片側に傾く、椅子や壁にもたれて背中を丸めながら両足や片足を上げる(深い体育座り)、または机に覆いかぶさるような座り方です。
スマホ、ゲーム、本、パソコンなどで30分以上もうつむいたままこの姿勢を中心にとっていると、姿勢をコントロールする筋肉の機能が低下してきます。
特に、骨盤後傾(こうけい)と言って骨盤が後ろに倒れるパターンは背中が丸まり易くなりいわゆる「猫背」といった姿勢に繋がります。逆に骨盤が前に傾く前傾(ぜんけい)の場合は腰が反り易くなり、どちらも腰に負担がかかってきます。
以前の記事でも書きましたが、日常的に「体を使って遊ぶ」事が少なくなり、インドアでの遊びや勉強等が増えたことも要因の一つだと考えられます。
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身体の機能においては、運動連鎖(うんどうれんさ)というものがあります。例えば、走る時に右足が上がると左手は上がり右手は引くといった意識しない体の繋がりの動作の事です。この時うまく繋がった動きが出来ない場合は左手は下がり右手が一緒に上がってしまうという事が言えます。
ゴールデンエイジである2,3歳~小学校高学年あたりの間で運動神経の基本的な部分が発達していきます。様々な刺激をたくさん与えることで身体機能は向上します。骨や筋肉は何もしなくてもある程度発達していきます(個人差があります)が、神経系は刺激を与えてあげないと脳に新しい回路が形成されていかないので、普段からあまり運動しない子は運動連鎖のパターンが少なくなり、運動時の複雑で細かい動きや、それらを統合した動きが難しくなります。
スポーツの場面にも運動連鎖の影響が出てきます。
第二次成長期でもある小学校高学年~20歳頃、男子で言うと特に5,6年生~中学校3年生頃までは、骨が一気に伸びる時期でもあります。成長期の骨には骨端核(こったんかく)や骨端線(こったんせん)と呼ばれる成長軟骨が存在し、骨のリモデリング(骨細胞の代謝活動)が盛んに行われているので、骨折してもくっつくのは大人に比べてとても早いという特徴があります。しかし、骨端の部分は筋肉や腱、靭帯などの組織が付着している部分でもあるので、それら組織の牽引ストレスに大きく影響を受けます。
下半身では、腰骨のあたりや膝下やくるぶし、かかとの部分などが分かり易いかと思います。
姿勢をコントロールする運動連鎖のパターンが崩れてくると、この骨端部分の牽引ストレスが増大し、成長途中の軟骨部分が筋肉に強く引っ張られて痛みを起こしてしまいます。サッカーで言うとオスグッド病やシーバー病が有名ですね。オスグッドは大腿四頭筋の牽引によって、膝下の脛骨粗面(けいこつそめん)と呼ばれる部分が引っ張られて痛みを起こします。レントゲンやエコーで観察すると、軟骨が微細に剥離している様子が観察できます。これらは病気ではありませんが、「スポーツ障害」といって、成長期でのオーバーユース(使い過ぎ)や姿勢の崩れによって、筋肉の牽引ストレスや骨間の衝突ストレスが成長軟骨に働き、痛みや変形を引き起こします。個人的には使い過ぎよりも運動連鎖パターンの機能低下により起こることがほとんどだと感じています。
日常生活において、スマホやゲームはなるべく1回15分~20分以内にしましょう(一日の回数を決める!)。そして、終わったら立つか仰向けの状態で体全体を気持ち良く伸ばして下さい。
座る時のコツとしては、膝の間に拳2つ位分の隙間を作り「坐骨(ざこつ、お尻の付け根の骨)」で骨盤を支えるように意識しながら座ってみましょう。胸を張って背中を伸ばす必要はありません。坐骨で立つようにすれば自然と胸が開きます。ゆらゆらしながらでもいいのでまずは「坐骨で立つ」ように意識して座ってみましょう。姿勢は日常生活から形成されるので是非実践してみて下さい。
※注意点は、頑張って胸を張らない。お尻を倒して座らない事です。
↑赤い印の部分が坐骨です
チームトレーナー與那城