#6 捻挫のリスクとその対応

「捻挫」とは、関節の正常な可動域範囲を超える外力が加わることで、関節を構成する組織(靭帯、腱、関節包、筋膜、骨、筋肉、血管、脂肪組織など)が損傷する外傷ですが、それらの位置関係やコラーゲン繊維の構造が変化し、結果として関節の不安定性が増大することでその後のパフォーマンスに大きく影響してきます。
一番多いパターンは、「内反捻挫(ないはんねんざ)」といって、内捻りの状態で捻るパターンが一番多いです。
捻挫は損傷の程度によってⅠ度~Ⅲ度まで分類されていますが、本人の自覚なし(痛みを伴わない)でも起こることがあります。⇒「足首の捻挫」MSDマニュアル家庭版
捻挫をすれば、初期の対応はRICE処置になりますが、あくまでも圧迫やアイシングの狙いは、「初期の疼痛(とうつう:痛み)を最小限に抑えること」「毛細血管を収縮させ腫れを最小限に抑えること」この二つが主な役目なので、何日も痛いからといってお家でアイシングを行う事はかえって治癒を遅らせる原因となる場合もあるので気を付けましょう。
よく「捻挫は癖になる」という言葉を聞きますが、捻挫をしても「痛みが少ないから大丈夫」「自分で処置して痛くなくなったから治った」などと捉えて自己判断でやり過ごしてきた結果、足首に不安定性を残し何度も捻挫を起こす事になりパフォーマンスに影響を及ぼしていく事になります。
慢性的に捻挫を繰り返している場合、足首の主要な靭帯が切れて無くなっているか、線維化していびつな構造になっている場合が多く、エコーではその違いが観察できます。この段階になると痛みはありませんが、足関節のズレに伴う不安定性が大きく残り、元の状態に戻すことは非常に難しくなります。
気を付けたいのは、YouTubeなどでテーピング等の動画を真似して、結果しびれや痛みが増す場合です。便利なツールではありますが、専門家は体の構造や働きを理解したうえで行っているので、見た目だけ真似するのはおすすめしません。ちゃんと専門家にかかるようにしましょう。

※外くるぶし周辺の腫れと、皮下出血が認められます。 骨折はありません。
腫れや変形が大きい場合などは骨折が伴っていないかどうかレントゲン検査が必要ですが、大抵の場合は骨折を伴う事は少ないです。但しレントゲン上では、筋肉や靭帯、内出血などの軟部組織の状態は観察できませんので、その場合はエコーまたはMRIが有用になってきます。また、靭帯に引っ張られて微細な剥離骨折(はくり:はがれる事)を伴っている場合もあるので注意が必要です。
骨折の有無や損傷の状態が確認されれば、まず組織の修復を促すために固定(包帯、テーピング、ギプス、副子(ふくし))と免荷(めんか:荷重をかけないようにする事)を行います。
※ギプス固定の場合は何度も付け替えできず長期間の固定になるため、筋肉の萎縮(いしゅく:縮んで小さくなる事)と関節の拘縮(こうしゅく:柔軟性がなくなり硬くなる事)のリスクがありますが、包帯やテーピング固定であればその都度患部の状態を確認しながら再固定できるので、特に競技復帰を目指す選手にとっては精神的に楽だと思います。(骨折があれば、ギプスが最も有用です。)
固定期間が終了すれば、リハビリトレーニングを行い軟部組織の定着を図り、体幹との連動性を高めていきます。
捻挫の場合、まず「どこの組織の損傷なのか」「どの動きに問題があるのか」「関節にズレは生じていないか」「捻りやすい体の使い方になってないか」「栄養の必要量は確保できているのか」など様々な要素を考慮し、慎重に見極めながら段階を踏んでその都度必要なことを行っていかなくてはいけません。
体を治すのは細胞の活動です。細胞がスムーズに代謝活動できるように「今何が必要なのか」を考えることが大事です。
捻挫を甘く見ず、早期に対応していく事が治る近道になります。
ご参考になれば幸いです。
チームトレーナー與那城